
接客って本当に大変だ。
ニコニコ接客してるだけで怒鳴られたり八つ当たりされたりすることは、しばしば。
時には明らかに範囲を超えて、要求されることもある。
私は化粧品の販売をしている。
化粧品販売では、買ってくださった方にお礼のプレゼントとしてお渡ししているサンプルがあるが、それを何も買わずに無料でくれと頼まれることがよくある。
断ると暴れ出す人もいた。
働く環境が飛行機に乗る直前のエリアなので、買ったものを持って搭乗口まで案内してくれという人もいる。
断ると、なんと不親切と舌打ちされたり。
360度ぐるっと可愛いコスメに囲まれた空間で怒りやイライラを爆発させている人を見ていると、まぁまぁ、そこまでカリカリせんでも。と思う。
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ここで一つ懺悔をすると、私は正直、お客さんに優しい店員ではないと思う。
そもそも『お客さんに優しい』の範囲がどこまでかとかもあるけれど、できないことはハッキリとできないと言うし、それは私の仕事ではないと判断すれば、きっぱりと断る。
接客は人助けではない。何でも屋でもない。
私もボランティアをしているわけではない。何でもかんでもの要求に応えることは、仕事に入っていない。
よくよく状況が分からないまま仕事の範囲を超えて要求にこたえたり、助けたりすることで、逆にお客さんに不利益となることもあるからだ。
正直さは大切だと思っている。
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ただ、自分の仕事の範囲なら最大限やる。
説明も、接客も、時間がないお客さんが最大限に買い物を楽しめるように何ができるかは常に考えている。
その人の着ている服、
している化粧の感じ、
肌質や肌の色、
顔色、
手と顔の肌の色の違い、
店に入ってきた様子から急いでいるか、
目線が向いてる先から、何を探しているのかを
なるべく瞬時に判断して、質問に応える準備をする。
仕事の範囲で目の前の人に最大限は尽くす。
常に新しい知識も入れて、その『最大限』の範囲を広げる努力をする。
そんな中で、めちゃくちゃに喜んでくれるお客さんに出会う。
「やっぱり、店員さんに聞いてよかったわ」って
「今日はちょっとブルーだったけど、いいものといい人に出会えて元気が出たわ」って
店員の私に(本来は言う義務はないのに)「ありがとう」と伝えてきてくださるお客さんがいる。
そんなお客さん方に、めちゃくちゃに伝えたいことがある。
喜んでくださってありがとうございます
免税店そんなに安くなるの?!って喜んでくださってありがとうございます
いい商品の紹介ありがとうって私に言葉にして伝えてくださってありがとうございます
化粧品を見て可愛い〜!っていう笑顔、ありがとうございます。
飛行機に乗って行く先のことをお話くださり、「おしゃべりが楽しかったわ」と、笑顔をありがとうございます。
あなた方の笑顔と喜んでくださる顔があるから、どんなに理不尽なことがあっても、私は消耗しない。
モチベーションを失わず、他のお客さんの笑顔を作るお手伝いがまたできる。
あなた方のような人たちがいるから、日本も捨てたもんじゃないと思えました。
あなた方のような素敵な人の笑顔は私の希望です。
あなた方に学び、私もお客の立場になったときに店員さんに対して、ちゃんと言葉にして「ありがとう」をいっぱい伝えたくなる。
そうしたら、その相手の店員さんもモチベーションがあがり、また他のお客さんの笑顔を作れるかもしれない。
そんな良い循環の中に、私はずっと居たい。
辛くて理不尽さに負けそうになっても、そこに居たい。
こうやって学んで考えさせてもらえる出会いがある接客業は、やっぱり最高だ。